ヨウ素 | 犬の手作りごはん栄養学

別名ヨード。代謝を促す甲状腺ホルモンの材料となるミネラルです。

甲状腺ホルモンの働き

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、糖質、タンパク質、脂質の代謝を高める働きがあります。成長を促し、皮膚や被毛を健康に保つのに欠かせないものです。

この大切な甲状腺ホルモンの材料として、ヨウ素は欠かせない存在です。

不足すると

ヨウ素が欠乏すると甲状腺腫を引き起こします。しかし海産物を適度に摂取することでヨウ素は十分補えるため、不足の心配はありません。

参考:アブラナ科の野菜(ブロッコリなど)を摂取すると、ヨウ素の吸収が阻害されて甲状腺機能低下症になることを心配される飼い主さんがいらっしゃいます。

確かにアブラナ科の野菜をはじめとする、いくつかの食品にはヨウ素の吸収を阻害する成分が含まれますが、通常の食事量程度の摂取では問題ありません

詳細は下記の記事内「アブラナ科の植物がなぜ、犬にダメと言われるのか?」も併せてご参照ください。

過剰症

通常の食事で過剰症の心配はありません。

多く含む食品

こんぶ、わかめ、海苔などの海藻類、魚介類に多く含まれます。

海藻類は犬の体に良いものですが、種類によっては消化しにくいものもあります。こんぶ、わかめは細かく刻み、加熱して与えるなど調理の工夫が必要です。

銅 | 犬の手作りごはん栄養学

ヘモグロビンの合成を助ける、貧血予防のミネラル。

ヘモグロビンの合成を助ける

銅は赤血球のヘモグロビンが作られる際、必要な酵素の成分になります。ヘモグロビンの材料は鉄ですが、鉄が十分でも銅が不足していると、正常にヘモグロビンが作られなくなります。

貧血の原因となるので注意が必要です。

酵素を構成する成分になる

銅は体の中で働く酵素の成分になります。血管壁や骨を作るコラーゲンを合成する際必要な酵素の成分にもなります。そのため血管や骨の健康維持にも欠かせないミネラルです。

不足すると

貧血、白血球の減少、骨の異常、動脈硬化の原因になる。

過剰症

通常の食事で過剰症の心配はありません

多く含む食品

魚介類、レバー、大豆製品に豊富です。

亜鉛 | 犬の手作りごはん栄養学

皮膚の健康維持に欠かせないミネラル。酵素の構成成分、細胞の形成に重要な働き。

全身の組織に広く分布

亜鉛は全身の組織に広く分布します。特に被毛、皮膚に多く含まれています。亜鉛が欠乏すると皮膚の異常や皮膚炎が起こります。

酵素の成分になる

亜鉛は200以上の酵素の成分として、タンパク質合成に特に深く関わっています。細胞の新陳代謝にも重要な役割を担っています。

多く含まれる食品

魚介類、肉、海藻類、豆類に豊富。特に牡蠣に含まれる亜鉛含有量は100g中13.2mgと際立ってい多いです。

牡蠣を犬に与える際は、加熱の上、消化しやすいよう小さく刻む、すりつぶすのがおすすめです。

塩素 | 犬の手作りごはん栄養学

主に食塩の形で摂取されるミネラル。胃液の成分になります。

胃酸は塩素から作られる

胃液中の塩酸は塩素から作られます。胃液は強い賛成で食物の中の雑菌を殺す働きを担います。

また塩素はタンパク質消化酵素を活性化して、タンパク質の消化を促します。

食塩を含む食品から自然に摂取できる

犬の手作りごはんは基本的に味付けをしません。それでも魚介類や肉といった生鮮食品には食塩が一定量含まれています。

犬も生きて行くためには体が適度な塩分を必要とします。

生鮮食品から自然な形で塩分を摂取することで、塩素も必要量を摂取できます。

硫黄 | 犬の手作りごはん栄養学

硫黄はタンパク質の構成成分アミノ酸に含まれます。タンパク質を十分に摂取することで必要量をまかなえます。

健康的な皮膚、爪、被毛に欠かせないミネラルです。

犬の健康な皮膚、爪、被毛に欠かせない成分

硫黄はシスチンというアミノ酸の成分として、骨や皮膚、爪、被毛に多く分布します。健康な被毛は皮膚の維持には欠かせない成分です。

タンパク質に含まれるため、食事からしっかりタンパク質を摂取することが必要です。

肉、魚、大豆製品を偏りなく食べていれば不足することはありません。

多く含まれる食品

魚介類、肉類、卵、乳製品、大豆製品などタンパク質を多く含む食品から硫黄を摂取できます。

鉄 | 犬の手作りごはん栄養学

全身の細胞に酸素を運ぶヘモグロビンの材料となる。食材によって吸収率が変わります。

全身の細胞組織に酸素を供給

体に存在するのうち、約70%は赤血球の成分ヘモグロビン、筋肉中に存在するミオグロビンの構成成分になります。

残り約30%は肝臓、骨髄、脾臓などに蓄えられます。

鉄は吸収されにくいミネラル

鉄は体に吸収されないミネラルである上に、体内に鉄のストックがあると必要以上に吸収されない仕組みになっています。

そのため不足することはあっても過剰になることはありません。

ヘム鉄と非ヘム鉄

植物性食品に含まれる非ヘム鉄は、動物性の食品に含まれりヘム鉄と比べると吸収率が低いです。ビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が上がります。

逆に食物繊維、ポリフェノール、カルシウムは鉄を吸着し、吸収を阻害します。これらの過度の摂取に注意が必要です。

多く含む食品

レバー類、カツオなどの魚介類、大豆製品、小松菜、ほうれん草などに豊富です。

マグネシウム | 犬の手作りごはん栄養学

体内の多くの酵素の働きに関わるミネラル。骨の成分としても重要。

酵素の活性化を助けるマグネシウム

体内では多くの酵素が働いています。これらの酵素はエネルギーの生成、タンパク質の合成、糖質の代謝などに関わりますが、その中でもマグネシウムの関与が重要です。

体内のミネラルバランスを調整

マグネシウムは全身の細胞内に含まれています。体内のミネラルバランスを整え、血圧、体温維持のメカニズムにも関わっています。

骨の成分としても重要

マグネシウムの半分以上が骨に貯蔵されています。丈夫な骨や歯を作る上で欠かせない成分です。

不足すると

不整脈、血圧上昇、心疾患のリスク。精神の不安定。

過剰症

過剰分は尿として排泄されるので、通常の食生活で過剰症の心配はありません。

サプリメントの誤食などで高マグネシウム血症になった場合、吐き気、下痢などが起こります。

多く含む食材

魚介類、ゴマ、大豆に豊富。未精製の穀物、精白度の低い穀物に多く含まれます。玄米、そば、全粒粉、ライ麦パンなど。

白米、精製された小麦粉にはほとんど含まれません。

ナトリウム | 犬の手作りごはん栄養学

ナトリウムカリウムと一緒に体内の水分量を調整する。犬も生きていく上で塩分は必要です。

ナトリウムは犬に必要なミネラル

犬に塩分は不要!という誤った理解がされることがあります。犬にも塩分は必要です。

塩分はナトリウムと塩素が結合したもの。ナトリウム塩と呼ばれます。犬の体の中にも塩分は存在しており、体内の水分調整を担っています。

犬の手作りごはんでは過剰摂取の心配はない

ナトリウムは魚介類に多く含まれます。肉類にも含まれるため、生鮮食品でこれらを摂取していれば、犬も自然にナトリウムを摂取していることになります。

犬の塩分要求量は人間ほど多くはありませんが、やはり生きていくためには必要です。

味付けなしの手作りごはんの場合、塩分が過剰になることはありません。むしろ低塩分なため、犬の1日の要求量を満たしていないのでは?という指摘もあります。

手作りごはん初心者の方が犬のご飯に味付けをする必要はありません。一方で、魚介類なども上手に取り入れて、犬が必要とする塩分を十分摂取出来る配慮も必要です。

多く含まれる食品

魚介類に多く含まれています。鮭、サバ、イワシなど犬の手作りごはんに使える魚をメニューに組み込むのがおすすめです。

カリウム | 犬の手作りごはん栄養学

過剰なナトリウムを排泄し、体内のpHバランスを維持する。

過剰な塩分を排泄し、高血圧を防ぐ

カリウムナトリウムと共に体液の構成成分として働きます。カリウムとナトリウムのバランスで、細胞の浸透圧とpHが正常に維持されます。

カリウムには体内の余分な塩分を排泄する働きもあります。これにより血圧上昇を防ぎ、高血圧の予防になります。

不足すると

血雨圧が高くなる。筋肉へのエネルギー補給が不足する。

過剰症

過剰摂取分は尿へと排泄されます。通常の食生活でカリウムの過剰症になる心配はありません。

栄養素を最大限に引き出す調理のコツ

カリウムは調理による損失が大きい栄養素です。

野菜、果物で生食可能な場合はで食べる方が、効率よく摂取できます。

煮ると約30%が消失します。スープにして汁ごと食べる調理がおすすめです。

多く含まれる食材

カリウムは新鮮な野菜、イモ類、果物類に多く含まれます。植物性の食材に多いミネラルです。

リン | 犬の手作りごはん栄養学

リンはカルシウムと並んで、骨と歯を作る重要な成分。エネルギー代謝にも関与する。

リンは体内で2つの大きな役割を担う

リンカルシウムについで多く体内に含まれるミネラルです。約85%がカルシウムと結合し、骨や歯を形成します。

約15%の多くはタンパク質と結合しリン脂質として細胞膜の材料になる、核酸の成分になるなどしています。

リンの摂取はバランスが大事

リンはカルシウムと一緒に骨や歯を作っています。リンとカルシウムのを同程度に取ることで、カルシウムの吸収率が最適になり、骨を丈夫にすると言われています。

リンはエネルギーを生み出すのに大切な成分

犬も人間も、体内でエネルギーを生み出す手段として「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質を利用しています。

これはアデノシンという物質にリン酸が3つ結合したものです。これが分解され、リン酸結合が外れる際、高いエネルギーを生み出します。

ATPは生物にとってはエネルギーの通貨のようなもの。ATPのおかげで私たちは効率よくエネルギーを貯蔵し、必要に応じて利用できます。

リンはそのATPの構成物質となる大切なものです。

不足すると

歯や骨が脆くなる。エネルギー不足になる

過剰症

腎機能低下。カルシウムが骨から血液中に放出され、骨量の減少につながる可能性がある。

人間の場合、加工食品でリンを多く取りすぎる傾向が指摘されますが、犬の場合は加工食品を食べるわけではありません。生鮮食品から作る手作りごはんではリンの過剰摂取の心配はありません。

多く含む食材

魚介類、肉類、乳製品、豆製品など幅広い食材に含まれます。

特に乳製品に含まれるリンはカルシウムとのバランスが良いとされています。

100gあたりの比較では「煮干し」に多くのリンが含まれます(1,500mg)。犬用のおやつとして煮干しが売られている場合もあります。こうした製品の利用もおすすめです。