レバーはビタミンAが豊富な食材です。ビタミンAは脂溶性、体に蓄積が可能です。そのため、食べ過ぎると「ビタミンA過剰症になるのでは?」と心配する飼い主さんもいます。
では実際のところ、どうなのでしょうか?
この記事では「犬にレバーをあげすぎると、何故ビタミンの過剰症になるの?」「どのくらいの量なら安全なの?」を栄養学の視点から解説します。この記事を読むことで、あなたは「レバーとビタミンAの過剰症の関係」「犬にレバーを与える際の指標」を理解できるようになります。
なぜ、レバーを与えるとビタミンA過剰症になると言われるのだろう?
この問題を理解するための背景を整理します。
ビタミンA過剰症って何?
ビタミンAを過剰に摂取し、体内に蓄積することで起こる中毒症状を指します。食欲不振、体重減少など。
ビタミンAは「脂溶性ビタミン」
脂溶性ビタミンとは、油に溶ける性質を持つビタミンのこと。ビタミンAは体脂肪に蓄積することが可能です。
レバーは飛び抜けて「ビタミンA」含有率が高い食べ物
レバー100gあたりのビタミンA含有量を下記に示します(単位:μg マイクログラム)
- 牛レバー:1100μg
- 豚レバー:13000μg
- 鶏レバー:14000μg
(出典:食品栄養成分表 / 女子栄養大学出版部)
特に鶏レバーがずば抜けてビタミンA含有量が高いことがわかります。
犬は1日にどのくらい、ビタミンAを必要とするの?
ビタミンA過剰症が心配!という場合「どのくらいの量までなら安全なの?」を知ることが大切です。ここで計算してみることにします。
計算式。ペットフードの基準を参考にしてみる。
ペットフードの基準値とされているAAFCO(米国飼料検査官協会)の数値をもとに考えてみましょう(1997年版)。
これによると成犬用ドライフード1kg(エネルギー量:3500kcal)あたりには、5000IUのビタミンAを最低含めること、とされています。
ペットフードは「それだけを食べて犬が健康で生きていける」とその時点で保証された栄養を含んでいる、というのが大前提です。ただし、この数字も必要に応じて改定されるので「絶対値」ではないことを理解しておく必要があります。
体重10kgの犬の場合で考えます。成犬の場合、1日当たりのエネルギー量は約700kcalです。このフードを1日に200g食べる計算となります。ここから必要とするビタミンAは1000 IUと計算できます。
さてAAFCOの基準では、成犬用ドライフード1kgあたりのビタミンA最大許容量は250000IUとされています。ここから単純に最低量の50倍程度までは許容範囲と考えられます。
では、この1日の要求量の50倍のビタミンA(最大許容量)をレバーに換算するとどのくらいの量か?を考えてみましょう。
ビタミンA許容量MAXまでをレバーで摂取すると、一体どのくらいの量になるの??
体重10kgの犬の1日最大許容量のビタミンA:1000 IU×50倍=50000 IU。
鶏レバー100g当たりのビタミンA含有量:14000μg=560000 IU
1日鶏レバー8.9gまでは許容範囲、という計算になります。
許容範囲最大、というのはここでは「体に影響が出ない範囲内MAXで」という意味で使っています。
鶏レバーはお刺身サイズのものを一切れで軽く9g程度になりますから、特に体の小さい小型犬は与える量に注意が必要です。
1回の食事で多少許容範囲を超えても、通常すぐに中毒症状が現れることはありません。ペットフードの最大許容範囲は安全を考慮してあるため、そこからちょっとでも超えると即中毒!という設定ではないからです。
しかしながら、脂溶性であるビタミンAは体に蓄積する性質を考えると、安全な許容範囲を超えてレバーを与え続けるのは避けるべきでしょう。
実際に、犬のビタミンAの安全上限を超えた食事を長く続けると、ビタミンA過剰摂取につながるとの報告もあります→ 参考:Vitamin A excess by feeding with horse meat products containing high levels of liver
安全に食べられる「量」をきちんと把握しよう。
「過剰症にならない範囲内で最大のビタミンAを、もし手作りごはんで食べさせるとしたら、何をどのくらい?」と、データを元に考えてみることは大切です。
闇雲に怖がるのではなく「どのくらい?」と実際に食べる量で考えてみる。こうした情報を自分で集め、考えられるようになると、手作りごはんへの不安を減らせます。犬の食事の安全度も高まります。
結論:レバーは安全な犬に量を知り、毎日連続で食べない限り大丈夫。
どうしても心配な場合はレバーの中でもビタミンA含有量が低い「牛レバー」を選べばより安心できます。
全ての栄養素について言えることですが、ビタミンAに限らず、一度に大量摂取するのは避けるべきです。
犬の栄養学の基礎を学びたい方はこちらもどうぞ。