ブロッコリーはビタミン・ミネラルが豊富な野菜。犬の手作りごはんにもおすすめです。
一方で「ブロッコリーはアブラナ科の野菜なのであげない方がよい」「ブロッコリーにはシュウ酸カルシウムが多いのであげない方がよいのでは?」という疑問を持つ手作りごはん初心者の方もいます。
この記事では、以下のポイントに絞ってブロッコリーについて解説していきます。
- 犬にブロッコリーを与えるメリット(栄養価の話)
- アブラナ科の野菜は犬に与えてはいけないは本当か?
- シュウ酸カルシウムが多いから、ブロッコリーを食べると結石症になる?
犬にブロッコリーを与えるメリット
ブロッコリーの栄養価から「ブロッコリーを犬に与えるメリット」を解説していきます。
三大抗酸化ビタミンで老化防止に
ブロッコリーは「β-カロテン(プロビタミンA)」「ビタミンC」「ビタミンE」の三大抗酸化ビタミンを含みます。
ビタミンには「似た性質を持つものを同時に摂取すると、相乗効果でお互いの働きを高め合う」という特徴があります。
特にブロッコリーの「茎」は緑色の濃い「蕾」の部分と比べると約3倍のビタミンCを含みます。
「茎」はそのままだと固く食べにくいですが、皮を厚くむいて茹でると柔らかく、甘みも強い部位です。
栄養豊富な「茎」も是非、皮を除きやわらく調理して犬に食べさせてください。
カルシウム、鉄分などのミネラル分も豊富
ブロッコリーには骨の健康維持に大切なカルシウム、貧血防止に役立つ鉄分も含まれています。
食物繊維も豊富、便秘予防に
ブロッコリーには多くの食物繊維が含まれています。食事量が少なく便秘がちな犬は食物繊維を適量摂取することで便秘改善効果が期待できます。
アブラナ科の野菜は犬に与えてはいけないの?
ブロッコリーはアブラナ科の植物です。同じグループにキャベツ、大根があります。
ネットで検索すると「犬にアブラナ科の植物はNG」と書かれた記事が多くあります。
「アブラナ科の植物は犬に与えない方がいいと聞いたけど、実際のところどうなの?」
そう疑問に思う方も多いでしょう。これについて解説します。
アブラナ科の植物がなぜ、犬にダメと言われるのか?
アブラナ科の植物には「ゴイトロゲン」という成分が含まれています。
この成分は食物中の「ヨウ素」の体への取り込みを阻害します。
「ヨウ素」は「甲状腺ホルモン」を作る材料になります。その材料が不足し、体は必要な甲状腺ホルモンを産生できなくなります。
このことが「甲状腺機能低下症」につながる、というのが「アブラナ科の植物は犬に与えてはいけない」と言われる原因としてあげられます。
でもちょっと待って。ブロッコリー以外にもありますよ?ゴイトロゲンを含む野菜。
アブラナ科の植物の代表はブロッコリー!ブロッコリーは「ゴイトロゲン(要素の吸収を妨げ甲状腺腫をおこすものの総称)」を含むからだめ!というのが「あげてはいけない説」の根拠です。
しかしブロッコリー以外の食品にも「ゴイトロゲン」は含まれているのです。
以下、そのリスト。
- 大豆
- 亜麻仁油
- さつまいも
- いちご
- なし
- 桃
- キャベツ
- 白菜
- ほうれん草
食品によって含有量は様々ですが、上記の食品も「ゴイトロゲン」を含みます。
もし「ゴイトロゲン」が少量でも犬や人の体に影響を与え、甲状腺機能低下症を発症させる成分であれば、これらの食品についても当然注意が必要なはずです。
でも実際にはどうでしょう?
さつまいもは市販の犬のおやつの材料に好んでよく使われます。
亜麻仁油も一時期大ブームになりました。体に良いと聞き、犬に与えていました!という方も多いはず。
そうした食品を摂取した結果、どうなったでしょうか?
犬の甲状腺機能低下症は増加したでしょうか?答えは「いいえ」です。
結論:常識量摂取した食品に含まれる「ゴイトロゲン」は問題なし(ただし注意事項あり)
常識的な食事量から摂取した「ゴイトロゲン」が健康な犬の甲状腺機能低下症の原因になることはありません。
実際に食事が原因で甲状腺機能低下症になった事例も存在しません。
もし起こすと知ればそれは、高濃度の「ゴイトロゲン」を短期間で摂取させるなど動物実験での話。
犬の手作りごはんの場合、甲状腺機能を低下させるほどの量の「ゴイトロゲン」を食品から摂取するのは無理があります。
結論:健康な犬が常識の範囲内で食べる分には問題なし。
甲状腺の病気を患っている場合は要注意
健康な犬であれば、常識の範囲内でブロッコリーを手作りごはんに使うのは問題ありません。
ただし甲状腺機能低下症で服薬中の場合、問題が起こる可能性があります。該当する場合は必ず担当獣医師へ相談を。
ブロッコリーに含まれる「シュウ酸」が結石症の原因になるのでは?
ブロッコリーに限らず野菜類を犬に与える際、必ずネット記事上で「シュウ酸」について注意するように書かれています。
実際、野菜を食べることが「結石症」の直接の原因になるような、誤解を招く内容も多く見られます。
なのでここでは「結石症」と「シュウ酸」の関係を整理しながら解説します。
犬の「シュウ酸カルシウム結石症」とは?
結石症は腎臓、尿管、膀胱、尿道などに石状のかたまりができる病気です。
シュウ酸カルシウム結石を発症する要因は実はよくわかっていません。遺伝、性別、食事、性ホルモンとの関係などが考えられています。
シュウ酸は野菜に多く含まれる成分で、カルシウムと容易に結合しやすい性質があります。
そのためシュウ酸を多く含む食品とカルシウムを同時摂取すると、腸内で互いに結合し「シュウ酸カルシウム」となります。この場合、できたシュウ酸カルシウムは便として排泄されるため問題は起こりません。
シュウ酸カルシウム結石症が起こりやすい環境
犬に多い結石症に「ストルバイト結石」があります。この治療の一環として「尿を酸性に傾けてストルバイト結石を溶かす」という方法があります。
実は「シュウ酸カルシウム結石」は尿が酸性になるとできやすくなります。
そのため「ストルバイト結石」の再発予防の療法食を食べ尿を酸性に傾けていために今度は「シュウ酸カルシウム結石」になってしまっうことがあります。難しいですね。
シュウ酸カルシウム結石症は、単に野菜を食べただけで発症するわけではありません。様々な要因があってのことです。
健康な犬が常識の範囲内で食べる分には問題ありません。
シュウ酸は茹でることで半分以下に減らせる
健康な犬が適量の野菜を食べること自体が、直接犬の「シュウ酸カルシウム結石」の原因になるわけではありません。
一方で、一度シュウ酸カルシウム結石症を患い「予防」のために気をつけたい、という場合は「茹でる」ことがおすすめです。
ほうれん草の場合で、おひたしにするとシュウ酸カルシウムを最大50%程度まで冷えらせることがわかっています(3分間茹でた場合)。
シュウ酸カルシウムが気になる場合、茹でれば減らせる。
結論:ブロッコリーは犬に問題なし
どんな食材にも「大量に摂取すると問題になる可能性がある成分」は含まれます。
ポイントは「どのくらい食べたらそうなるか?」という量の問題です。
量の問題を抜きに「良い・悪い」は言えません。
またその成分が体にどう作用して問題になるのか?という「仕組み」を知らなければ、対応方法がわかりません。
その成分がただ含まれている、というだけで闇雲に特定の食品を怖がったり、避けるのは意味がありません。
「どのくらい食べたら危険なの?」「どういう仕組みでその症状は起こるのか?」をきちんと理解した上で判断するのが正解です。
こちらの記事も併せて参考に。本当に危険なものとそうでないものを知ろう。
そもそも、野菜自体犬にあげて良いの?という方はこちら。