「心臓病の愛犬の健康を考えて、体に良いと言われている納豆を与えています。ところが先日、友人から『人の場合は心臓病だと納豆を与えてはいけないんだよ?あなたの犬は大丈夫?』と聞かれました。犬の場合も良くないのでしょうか?」
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犬に野菜ってあげていいの?与えてダメなものではないですよ。詳しい理由と解説【初心者向け】
「犬に野菜ってあげていいの?」これって手作りごはんをやっていく上で永遠のテーマとも言える悩みですよね。
結論から先に言うと「玉ねぎなど、犬に明らかに害のある食べ物以外は基本OK」です。
ただし条件付きOKの野菜もあるため、野菜に関しては単純に「良い・悪い」が言えません。
「犬は肉食動物なので野菜は体に負担」と言うのは明らかに間違いです。ネット上に多い記述なので要注意。
この記事では「犬と野菜の関係」を正しく解説し、与える際の注意点も併せてお話しします。
大雑把な結論:犬に野菜は問題ない。ただし…
野菜といってもいろいろありますよね。
犬のとってダメな野菜をまずしっかり理解しましょう。
ネギ類はNG×
長ネギ、玉ねぎなどの「ネギ類」に含まれる成分(アリルプロピルジスルフィド)は犬が許容量を摂取すると「玉ねぎ中毒」を引き起こします。
参考:犬の手作りごはん「食べさせてはいけないもの10のリスト」【初心者向け】
「玉ねぎ中毒」になると赤血球が壊れ、中の色素が尿に漏れ出てきます。赤〜濃いオレンジ色に近い「ヘモグロビン尿」がでます。この症状があるときはすぐに動物病院へ。
きのこ類は条件付き△
手作りごはんの本やネット上のレシピには「きのこ」を犬の手作りごはんに勧めている記事もあります。しかし犬によっては「きのこ」を与えると嘔吐する場合があります。
きのこは犬にとって消化しにくい食物です。与える際はごく少量に止めるか、細かく刻んで少量から始めて様子を見ましょう。
尚、きのこ類は絶対に「生」で与えてはいけません。
きのこの生食はヒトでも食中毒の危険があります。
犬に野菜がダメって何故言われるのか?
犬は肉食動物なので「野菜」は消化に悪い、適さないという説をネット上でよく見かけます。
これは明らかに誤りです。以下解説。
犬は雑食動物です
犬の祖先は狼、狼は肉食、だから犬も肉食、という風に誤解されています。これは誤り。
犬は雑食動物。肉も食べますが、穀物食、野菜にもよく適応します。
野菜を犬は消化できないから負担は「間違い」×
野菜に含まれる「食物繊維」を消化し、自分のエネルギーとして利用できるのは草食動物です。
草食動物は消化管に微生物を飼っていて、その微生物に食物繊維を分解してもらい、その副産物をエネルギー利用しています。
犬も人も自前の消化酵素では食物繊維を消化できません。
犬・人でも腸内細菌がごくわずかに食物繊維を分解し、そこから微量なエネルギー利用も行われているようです。それでも必要なエネルギーをまかなうほどではありません。
食物繊維のメリットはむしろ「消化できないこと」にあります。
消化できないからこそ、腸内で膨らみ排便を促す、腸内の不要物を吸着し排泄を促すなど様々なメリットがあります。
消化できない=体に負担とは限らない
ということです。
初心者におすすめの「野菜」5種
犬の手作りごはん初心者でも扱いやすい「犬におすすめの野菜」を5つ厳選してご紹介します。
1:白菜
柔らかく癖のない「白菜」は初心者におすすめです。柔らかく切り、食べやすい大きさに切って与えます。
他の素材の味が染み込みやすいので、肉と合わせると野菜が初めての犬でも抵抗なく食べられます。
2:にんじん
緑黄色野菜のにんじんはβ-カロテンが豊富です。β-カロテンは抗酸化力が高く体内の酸化防止におすすめです。
犬は甘みを好みます。にんじんを柔らかく煮て甘みを引き出すと犬にも食べやすい。食べやすい大きさに切って与えます。
3:きゅうり
水分が多く、ぽりぽりとおやつ代わりに食べる犬も。暑い時期の水分補給にも最適です。
与える際は薄くスライスして。生でも、炒め物でもOKです。
4:キャベツ
胃の粘膜を保護する「ビタミンU(通称:キャベジン)」が豊富。「ビタミンC」も豊富で特に芯の近くに多く含まれます。
火を通すと柔らかくなります。手作り食にまだ慣れていない犬には加熱して与えます。野菜に慣れている犬であれば、生でも加熱でも。
キャベツの解説記事はこちら:犬の手作りごはんにおすすめ野菜「キャベツ」の解説。胃粘膜の保護に【初心者向け】
5:トマト
トマトの酸味や甘みを好む犬は多く、生で、トマト煮込みでと手作り食に活躍するのはトマトです。
トマトには「三大抗酸化ビタミン」と呼ばれる「β-カロテン(プロビタミンA)」「ビタミンC」「ビタミンE」が多く含まれています。
トマトの赤い色素である「リコペン」はβ-カロテンよりもさらに強い抗酸化力が備わっています。
生で、加熱でも犬のごはんに使えます。缶詰を使えば通年トマトを利用でき、便利です。
トマトの詳しい解説がこちらを参考に:犬の手作りごはんにおすすめ野菜「トマト」の解説【初心者向け】
まとめ
- 「犬に野菜はダメ」ではなく「ダメな野菜もある」が正解
- 消化できないから体に悪いというわけではない
- ダメな野菜はその理由も知っておこう
- 初心者は加熱、細かく刻むなど消化良い調理法でチャレンジしよう
犬に生肉を与えてもいいですか?与えるべき?その前に!生肉潜むリスクをちゃんと知っていますか?【初心者向け】
犬の手作りごはんの中の「生食」というジャンル。これは文字通り犬に生の肉を加熱調理せず、そのまま与えることを指します。
ネット上の多くの記事で「犬には生食が良い」という体験談を読むことができます。一方で「犬に肉を生のまま与えることは食中毒の危険があり、おすすめではない」という正反対の見解も。
結局のところどうなのでしょうか。この記事では「生食」について「栄養学的メリットはあるのか」「感染症(人獣共通感染症:ズーノーシス)の危険性は?」「薬剤耐性菌の問題」という3つの視点で客観的に解説していきます。
結論から先に言えば、筆者は感染症のリスクを冒してまで、生肉を犬に与えることのメリットを見出せません。なのでオススメではありません。加熱することに大きな栄養学的デメリットも特に見出せない。
今、生食ってどうなんだろう?と検討中のあなたは、この記事を読むことで「生肉についての栄養学的理解」「生肉を犬に与えるリスク」について客観的な知識を得られます。リスクを知った上で正しい判断を。
犬に生肉を与える「生食」とは?
はじめに「生食」の定義から。
「生食」は「Raw meat-based (RMBD) diets」として海外のペットオーナーの間で以前から実施され、近年増加傾向にあります。
「生食」として与えられる内容は、哺乳類(牛、豚、羊など)、魚、または家禽(鶏など)の筋肉、内臓、骨、および低温殺菌されていない牛乳や生卵です。
「生食のメリット」を検証。
生食のメリットは主に以下のものが主張されます。
- 生肉の方が犬の消化に良い
- 犬の先祖はオオカミで肉食なので、オオカミに近い食事の方が犬の体に良い
- 生で食べることで、含まれる栄養素をそのまま摂取できる(特に酵素、ビタミン)
これらのメリットは個人的体験に基づくもので、科学的な検証はされていません。これらの主張の中には明らかに誤りもあるため(これについては後述)注意が必要です。
検証1:生食は「消化が良い」か?「酵素」視点で考えてみる。
『生食は「酵素」をそのまま摂取できるため、犬の消化に良い影響を与える』という主張。これについて検証します。
まず犬は消化に外部からの酵素を必要としません。自前の消化酵素で問題なく食物を消化できます。そのため食べ物に含まれる酵素が犬の消化を助ける、というのは誤りです。
次に、酵素そのものの性質に注目してみましょう。酵素はタンパク質でできています。食物は口から胃へ送られ、そこで強力な胃酸による消化にさらされます。犬の胃酸は平均pH1.4、これは強い酸性で食物を固形から粥状(糜粥:びじゅく)に変化させます。
タンパク質は「熱」「酸」「アルカリ」にさらされるとその性質を変えるという特徴があります。卵を加熱すると固くなり固形になります。牛乳にレモン果汁(酸性)を加えると牛乳内のタンパク質が固まり、カッテージチーズができます。
つまりタンパク質である「酵素」も消化液(強酸性)にさらされると、その性質が変わ流ということ。性質が変われば、酵素としての活性も失われます。
そのため、食物にもともと含まれている酵素が消化を助ける働きは、期待できません。消化液にさらされた時点で、酵素として働けなくなりますからね。
結論:食物に含まれる酵素に、消化の手助けは一切期待できない。
検証2:「生で食べると栄養素が壊れにくいので、体に良い」を考えてみる。
『加熱により食物に含まれる栄養素が壊れてしまう。だから生のまま食べた方が体に良い』
そこで例に挙げられるのが「ビタミンC」です。
ビタミンCが調理によって失われるのは事実です。加熱で失われる代表のような栄養素。
ビタミンCは水溶性です。茹でる調理の場合、多くが水に溶け流れ出す。そのためビタミンCが豊富な野菜類は、茹でる場合は短時間、または煮汁ごと食べる調理法がおすすめです。
さて肉に含まれるビタミン含有量が多いのは「ビタミンA」「ビタミンB群」です。実は肉には、ビタミンCわずかな量しか含まれません。
そのためもともと、ビタミンCの供給源として肉は適していません。
ビタミンCを摂取したければ、他の食物から摂るのが妥当です。ビタミンCを摂取したいのであれば、肉のビタミン流出を考えるより、ビタミンCが豊富な野菜や果物を肉に添える方が現実的です。
ビタミンB群も同じく水溶性。茹でると水に溶けて損失が大きいです。
ビタミンAは脂溶性。そして肉を焼く場合、ビタミンA、B群ともに損失量はわずかです。
つまり、肉をシンプルに「焼く」という調理法であれば、生食と比べて大きく栄養が損なわれるわけでは無いということ。
加熱によるわずかな栄養の損失と、生肉には「病原体汚染」「寄生虫」(後述)のリスク。両天秤に抱えてよく考えてみることです。
感染症は、場合によっては犬を命の危険に晒します。それだけでなく、人にも感染する場合もある。これを人獣共通感染症(ズーノーシス)と呼びます。
人獣共通感染症(ズーノーシス)の中には、妊婦が感染すると流産・死産、退治に重い障害を残すものもあります。
そんな犬の生食で大げさな、と思う人もいるかもしれませんが、生で肉を食べると言うことはそれなりのリスクを負っている事を自覚すべきです。そうでなければ、わざわざ国が「肉は焼いて食べよう」と言う啓発キャンペーンをやったりしません→正しい知識で食中毒対策を! 肉はよく焼いておいしく食べよう
検証3「犬の祖先は狼で肉食なので、野生に近い食事=生肉がベスト」は正しいか?
犬の祖先が狼なのは事実です。狼は肉食寄りの雑食性です。犬は雑食動物で、肉以外の穀物などにもよく適応します。エネルギーとして利用するのに何の問題もありません。
犬は家畜は家畜化された動物です。犬はこれまでに歴史の中で、人間から与えられた食べ物に適応し、それらから糖質、脂質をよく消化し、エネルギーに変える方向へ進化してきました。
その結果、野生動物である狼と、家畜化された現代の犬では生物として大きな隔たりがあります。過去に祖先が同じだったことを理由に、野生動物である狼に近い食餌が犬にとって最適とは限りません。
野生動物は家畜化された動物と比較して寿命が短いです。その短い寿命の中で繁殖を行い、子孫を残すために最適な食餌が、そのまま家畜化された犬にとってもベストであるとは言えません。
生食の「リスク」を正しく理解しよう。
ここでは生食のリスクについて解説します。
病原体汚染の危険性を知ろう
飼い主が自分で購入した生肉、または「生食用」として売られている生肉から病原体が検出されるケースがあります。
オランダで行われた調査の数字を以下にご紹介します。
調査方法:オランダで販売されている、8つの異なるブランド、35種類の市販冷凍RMBD(生食用肉)を分析。結果は以下の通り:
- 腸管出血性大腸菌O157(8製品、23%)
- ESBL産生菌(28製品、80%)
- リステリア・モノサイトゲネス(19製品、54%)
- その他のリステリア菌(15製品、43%)
- サルモネラ菌(7製品、20%)
- 住肉胞子虫(4製品、11%)
- トキソプラズマ(2製品、6%)
これらの病原体、および寄生虫が発見されました。→参考:Zoonotic bacteria and parasites found in raw meat-based diets for cats and dogs.
オランダでの調査につき、この結果をそのまま日本の製品に当てはめることはできません。しかし、食肉にこうした病原菌汚染は付きものです。
サルモネラ菌は自然界に広く分布している菌です。鶏にとってサルモネラ菌はごくありふれた「腸内細菌」にすぎません。人間がサルモネラ菌に汚染された食物を食べると、サルモネラ食中毒を発症します。
日本国内における鶏肉のサルモネラ菌汚染率は高く、厚生労働省の市販流通食品の調査(1999〜2008年)では以下の結果が報告されています(平均値)。
- 鶏ミンチ肉: 33.5%
- 鶏たたき:10.6%
出典:鶏肉におけるサルモネラ属菌のリスクプロファイル改訂版を公表しました。
サルモネラ菌が鶏の腸内細菌である以上、食肉加工の行程上、処理した内臓に食肉が触れて汚染されることは防ぎきれません。
新鮮な鶏肉であれば大丈夫、というのは誤解です。新鮮でも、汚染された鶏肉であればサルモネラ菌による食中毒になります。
鮮度の問題ではなく「汚染されているか・いないか」。
サルモネラ菌は加熱することで失活します。
病原体の解説1:腸管出血性大腸菌O157
o157は出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群を引き起こす大腸菌です。主に食品の汚染から人に感染します。動物との接触で感染した事例もあります。
感染すると食中毒症状を起こします。O157は食材を加熱調理することで防げる病原体です。
病原体の解説2:ESBL産生菌
ペニシリンなどのβラクタム環を持つ抗生物質を分解する酵素を産生する菌のことです。簡単に言えば「抗生物質が効かない菌」です。薬剤耐性菌の一種です。これらの菌に感染すると治療が困難になります。
病原体の解説3:リステリア菌
リステリア菌による感染症は、人・動物にも見られる「人畜共通感染症」です。食品汚染が主な感染源ですが、ペットから感染する場合もあります。
成人の場合、感染しても発症しないケースがありますが、発症すると発熱、頭痛、嘔吐、意識障害や痙攣が起こります。
妊婦が感染した場合、胎児へ影響します。深刻なケースではリステリア感染症が原因で、胎児が出生後、数日で死亡するケースがあります。
ペットへの感染を防ぐことは、私たち自身、私たちの周りの人たちを守ることにつながります。生食にはこうしたリスクがある事を、正しく理解しておくことが大切。
リステリア菌は加熱によって死滅します。
病原体の解説4:サルモネラ菌
サルモネラ菌に汚染された食品を口にすると、食中毒症状がみられます。小児、高齢者は重篤化しやすいので注意が必要です。
鶏肉への汚染が顕著です。十分加熱することで、サルモネラ菌は死滅します。
病原体の解説5:住肉胞子虫
様々な種類がありますが、フェイヤー肉胞子虫(馬肉の生食による食中毒の原因)が特に知られています。豚、牛、羊への感染、そこからの食中毒の報告もあります。
感染すると下痢、腹痛等の症状が現れます。十分な加熱調理を行うことで、防ぐことが可能です。
病原体の解説6:トキソプラズマ
トキソプラズは食物、水を介して感染します。感染リスクが高いのは豚、羊、山羊の生肉です。妊婦が感染した場合、胎児への深刻な影響(流死産、水頭症、視力障害など様々)があります。十分な加熱により、トキソプラズマは死滅します。
まとめ:「生食」のリスクを正しく知って、私たち自身を守ろう。
犬にどのような食事を選び、与えるかは飼い主の自由です。
ただし、選択には責任が伴います。
食を考える際、犬とその飼い主自身だけでなく、周りの人たちの健康を守る意識を持つことも大切。
特に近年では「薬剤耐性菌」の出現が私たちの健康を脅かしています。食肉の生産現場では、家畜の成長促進に抗生物質を利用することが「薬剤耐性菌」を生む原因ではないかと問題視されています。→参考:家畜に使用する抗菌性物質について
食肉が「薬剤耐性菌」に汚染されていた場合、加熱処理をせず犬がそれを食べ、調理や犬の糞便の処理から人間への感染が懸念されます。
生食のリスクはもっとよく知られる必要があります。
リスクを知らず、「自然だから」「ナチュラルそう」と言うイメージだけで生食を選択する姿勢は勧められません。
加熱した食材でも必要な栄養は十分に摂取できます。
犬にレバー、あげすぎるとビタミンAの過剰症になるって本当?を解説【初心者向け】
レバーはビタミンAが豊富な食材です。ビタミンAは脂溶性、体に蓄積が可能です。そのため、食べ過ぎると「ビタミンA過剰症になるのでは?」と心配する飼い主さんもいます。
では実際のところ、どうなのでしょうか?
この記事では「犬にレバーをあげすぎると、何故ビタミンの過剰症になるの?」「どのくらいの量なら安全なの?」を栄養学の視点から解説します。この記事を読むことで、あなたは「レバーとビタミンAの過剰症の関係」「犬にレバーを与える際の指標」を理解できるようになります。
なぜ、レバーを与えるとビタミンA過剰症になると言われるのだろう?
この問題を理解するための背景を整理します。
ビタミンA過剰症って何?
ビタミンAを過剰に摂取し、体内に蓄積することで起こる中毒症状を指します。食欲不振、体重減少など。
ビタミンAは「脂溶性ビタミン」
脂溶性ビタミンとは、油に溶ける性質を持つビタミンのこと。ビタミンAは体脂肪に蓄積することが可能です。
レバーは飛び抜けて「ビタミンA」含有率が高い食べ物
レバー100gあたりのビタミンA含有量を下記に示します(単位:μg マイクログラム)
- 牛レバー:1100μg
- 豚レバー:13000μg
- 鶏レバー:14000μg
(出典:食品栄養成分表 / 女子栄養大学出版部)
特に鶏レバーがずば抜けてビタミンA含有量が高いことがわかります。
犬は1日にどのくらい、ビタミンAを必要とするの?
ビタミンA過剰症が心配!という場合「どのくらいの量までなら安全なの?」を知ることが大切です。ここで計算してみることにします。
計算式。ペットフードの基準を参考にしてみる。
ペットフードの基準値とされているAAFCO(米国飼料検査官協会)の数値をもとに考えてみましょう(1997年版)。
これによると成犬用ドライフード1kg(エネルギー量:3500kcal)あたりには、5000IUのビタミンAを最低含めること、とされています。
ペットフードは「それだけを食べて犬が健康で生きていける」とその時点で保証された栄養を含んでいる、というのが大前提です。ただし、この数字も必要に応じて改定されるので「絶対値」ではないことを理解しておく必要があります。
体重10kgの犬の場合で考えます。成犬の場合、1日当たりのエネルギー量は約700kcalです。このフードを1日に200g食べる計算となります。ここから必要とするビタミンAは1000 IUと計算できます。
さてAAFCOの基準では、成犬用ドライフード1kgあたりのビタミンA最大許容量は250000IUとされています。ここから単純に最低量の50倍程度までは許容範囲と考えられます。
では、この1日の要求量の50倍のビタミンA(最大許容量)をレバーに換算するとどのくらいの量か?を考えてみましょう。
ビタミンA許容量MAXまでをレバーで摂取すると、一体どのくらいの量になるの??
体重10kgの犬の1日最大許容量のビタミンA:1000 IU×50倍=50000 IU。
鶏レバー100g当たりのビタミンA含有量:14000μg=560000 IU
1日鶏レバー8.9gまでは許容範囲、という計算になります。
許容範囲最大、というのはここでは「体に影響が出ない範囲内MAXで」という意味で使っています。
鶏レバーはお刺身サイズのものを一切れで軽く9g程度になりますから、特に体の小さい小型犬は与える量に注意が必要です。
1回の食事で多少許容範囲を超えても、通常すぐに中毒症状が現れることはありません。ペットフードの最大許容範囲は安全を考慮してあるため、そこからちょっとでも超えると即中毒!という設定ではないからです。
しかしながら、脂溶性であるビタミンAは体に蓄積する性質を考えると、安全な許容範囲を超えてレバーを与え続けるのは避けるべきでしょう。
実際に、犬のビタミンAの安全上限を超えた食事を長く続けると、ビタミンA過剰摂取につながるとの報告もあります→ 参考:Vitamin A excess by feeding with horse meat products containing high levels of liver
安全に食べられる「量」をきちんと把握しよう。
「過剰症にならない範囲内で最大のビタミンAを、もし手作りごはんで食べさせるとしたら、何をどのくらい?」と、データを元に考えてみることは大切です。
闇雲に怖がるのではなく「どのくらい?」と実際に食べる量で考えてみる。こうした情報を自分で集め、考えられるようになると、手作りごはんへの不安を減らせます。犬の食事の安全度も高まります。
結論:レバーは安全な犬に量を知り、毎日連続で食べない限り大丈夫。
どうしても心配な場合はレバーの中でもビタミンA含有量が低い「牛レバー」を選べばより安心できます。
全ての栄養素について言えることですが、ビタミンAに限らず、一度に大量摂取するのは避けるべきです。
犬の栄養学の基礎を学びたい方はこちらもどうぞ。
犬に塩分は危険?不要?犬と塩分の正しい関係を理解する【初心者向け】
犬の手作りごはんに味付けは不要です。これはシンプルな事実です。一方でこの事実が一人歩きし「犬に塩分は危険!」という誤解も生まれています。
過度の塩分摂取は犬だけでなく、人間も危険です。ただしそれはあくまで「量」の問題。塩分自体が犬の体に害を与える「毒物」というわけではありません。
この記事では、こうした「塩分」への誤解を解き、犬と塩分の正しい関係について解説していきます。
この記事を読むことで、あなたは「犬と塩分」の関係について正しく理解できるようになります。必要以上に塩分を怖がることがなくなり、犬の手作り食への不安を一つ解消できます。
そもそも塩分は、犬にとって必要です。
私たちの体は人も犬も、塩分を必要とします。
「塩分」を知ろう
塩分というのは一般的に「食塩」と同じ意味合いで使用されます。ここでは成分「塩化ナトリウム」について詳しく解説します。「塩素」と「ナトリウム」で構成される物質です。
塩素のはたらき
「塩素」は体の中で「胃液」の材料になります。胃液中に含まれる「塩酸」のなかに「塩素」は含まれており、タンパク質を消化する酵素を活性化します。
また「塩酸」は強い酸性なので、殺菌効果を発揮します。食べ物に含まれる雑菌を殺し、犬を食中毒から守っています。特に犬の胃酸は酸性度が高く、少々腐った食べ物を食べても平気でいることも多いです。
ナトリウムの働き
ナトリウムは体内の水分量を調整するのに欠かせません。
カリウムとセットになり、神経伝達、筋肉収縮、心臓を正常に動かすなど大切な働きを担っています。
最初の結論「犬だって塩分は必要」
塩素もナトリウムも、生きていく上で犬にとって大切なものです。食事から全く摂取できないと、生理・代謝が阻害されます。最終的には生命の危険があります。
結局のところ、大事なのは「量」の問題です。与えすぎてもダメ、与えなさすぎてもダメ。
では、犬の手作りごはんを作る上で「塩分」をどう扱ったらいいか?
肉・魚にもともと含まれる塩分で犬は十分
味付けをしていない生の魚や肉にも一定量の塩分が含まれています。
例えば鮭。塩で味付けをしていない生の鮭を焼いて食べたことはありませんか?その時全く塩味はしなかったでしょうか?
塩でしっかりと味付けをしたものほどではなくても、ほんのりとかすかな塩気を感じるはずです。
実際に、味付けをしなくても鮭100gあたりには0.2gの塩分(食塩相当量で換算)が含まれています。(出典:食品成分表 女子栄養大学出版部)。
肉も同様です。鳥もも肉100gあたり0.1gの塩分が含まれています。
つまり、特に味付けをしなくても肉・魚にはもともと塩分が含まれている、ということです。。犬はこの「もともと食材に含まれている塩分」のみで十分やっていけるため、手作り食に味付けは不要なのです。
「犬に塩分は不要」は不正解。
「犬は低塩分でも生きていける」が正解。
犬も生命維持には塩分が必要なので、必要量は摂取しなくてはいけません。それは肉や魚に元々含まれている量で十分です、という話。
ちなみに犬の1日の塩分要求量は「体重1kgあたり242mg(NRC:National Research Council 1977)」とされています。成犬期の犬・体重10kgで2.4gほどです。これは一般的な食塩小さじ1/2杯程度に相当します。
犬に塩分が「害」になる量ってどのくらい?
一般に犬が体調を崩す塩分の摂取量は2〜3g/kg(体重1kgあたり)、4g/kgで致死量とよく言われます。体重10kgの犬が食塩を20〜30g摂取で嘔吐などの異変が現れる計算になります。
食塩20〜30gというのは相当な量です。塩大さじ1杯が約15g、大さじ2杯の食塩を一度に食べて体調不良というイメージです。
塩大さじ2杯を一度に口に入れるところをイメージしてみてください。これはかなり「しょっぱい」どころではない量ではないでしょうか?
犬が塩分を一定量、一度に摂ると確かに体調不良を起こします。しかしながら、その大量不良を起こす量が、常識的に考えて「そもそも一度に食べられる量ではない」ということがわかります。
犬に口の中が塩が白だらけになる量を与えても、そもそも飲み込まずに吐き出すことでしょう。
でも実際に、塩分の過剰摂取による、犬の体調不良や死亡事故が起こるのは何故?
塩の誤食事故には以下のパターンがあります:
- 高濃度の塩分が溶けた水を興味本位で舐めた、飲んだ
- 異物を飲み込んだ犬へ、飼い主が「塩水を飲ませれば吐く」という情報をもとに大量の食塩水を飲ませた
- 塩化ナトリウムを使用した「融雪剤」の誤食
- 海水を大量に飲み込んだ
これらの誤食事故は、飼い主が注意することで多くの場合、防げます。
まとめ
犬にとっても「塩分」は必要。生命維持に欠かせない大切な物質。
ただし、犬は人ほど塩分を必要としない。低塩分でも生きていける動物。
問題になるのは「量」。過度な塩分摂取は中毒症状を起こすので誤食事故に注意。
手づくりごはんは肉・魚にもともと含まれる塩分をそのまま生かし、味付けなしで犬に与えるもの。犬が生きていくのに必要な塩分はそれで十分摂取可能。
犬の手作りごはん「食べさせてはいけないもの10のリスト」【初心者向け】
初心者は要チェック!犬にこれは食べさせちゃダメ
犬に食べさせてはいけない食べ物の把握は「犬の手作りごはん」を作る前に必要な必須の知識です。
このページでは、食べさせてはいけない食物10種類について解説します。
紹介するリストはこちら:
チョコレート/ネギ類(玉ねぎ・ニンニク)/ぶどう(レーズン)/生のイカ/大量の脂身/アボカド/マカデミアナッツ/キシリトール/カフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶)/アルコール類
1:チョコレート
犬がチョコレートを食べると、チョコレート中毒と呼ばれる症状を起こす場合があります。
チョコレートの毒性
チョコレートには「テオブロミン」と「カフェイン」が含まれています。この成分が犬の健康に影響します。
毒性は「食べたチョコレートの種類」と「食べた量」によって決まります。
カカオの含有率が高い「ダークチョコレート」の危険度が最も高く、「ホワイトチョコレート」では危険度が下がります。
ごく少量の誤食では、ほとんどの場合、犬に健康上の症状は現れません。
中毒症状
- 落ち着きがない
- 嘔吐
- 下痢
- 心拍数の上昇
- 血圧上昇
- 体温上昇
犬がチョコレート中毒になった場合、獣医師へ速やかに「犬が食べたチョコレートの種類」「量」を伝えましょう。
2:ねぎ類(ねぎ・ニンニク)
犬が玉ねぎを食べると、玉ねぎ中毒を起こす場合があります。尿の色が赤く変わる症状が出た場合は、すぐに動物病院へ。
ネギ類(玉ねぎ・ニンニク)の毒性
玉ねぎを含むネギ類(ねぎ、ニンニク)には「犬の赤血球を破壊する成分」が含まれています。
刺激が強い成分が多く、犬に「胃腸炎」を引き起こす場合もあります。
ネギ類の中毒は、症状が現れるまで時間がかかる場合があります。食べてから数日後に症状が現れることもあります。
初心者はここに注意!
玉ねぎの有毒成分は、加熱しても壊れません。煮汁にも溶け出すため、玉ねぎそのものを取り除いても、有毒成分は汁に残ります。
中毒症状
- 尿が赤くなる(赤血球の破壊による。血尿とは異なる)
- よだれ
- 腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 呼吸数増加
- 心拍数増加
3:ぶどう(レーズン)
ぶどうは犬に急性腎不全を起こす場合があります。
毒性
ぶどう(レーズン)による「急性腎不全」はブドウジュース、レーズンを含むお菓子やパン、クッキー、ワインなどでも起こります。
ぶどうがなぜ、犬に中毒を起こすか?という原因はまだわかっていません。
また、ぶどうによる中毒は「食べた量に関係なく」起こっています。
無農薬栽培・通常栽培を問わず、犬に中毒を起こす可能性があるため、注意が必要です。
中毒症状
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 急性腎不全
4:生のイカ
生のイカは消化が悪く、犬に嘔吐・下痢を引き起こす場合があります。
イカは生のままでは消化が悪い。
消化の悪さから、イカは犬が食べるのに適した食物ではありません。
消化が悪いことは、加熱しても変わりません。
犬の手作りごはんには、イカ以外にも安心して使える食材がたくさんあります。どうしてもイカを食べさせなければならない!という状況は稀です。他の食材を検討しましょう。
5:大量の脂身
大量の脂身を含む食事が原因で、犬が急性膵炎を起こす場合があります。急性膵炎は命の危険を伴います。
毒性
脂肪の大量摂取による「急性膵炎」で動物病院へ運ばれる犬が増えています。
特定の犬種、肥満犬、老犬に起こりやすいことも特徴です。
起こりやすい犬種:ミニチュアシュナウザー/トイプードル/コッカースパニエル
膵炎の症状
- 嘔吐
- 腹痛
- 食欲不振
- 下痢
急性膵炎は命の危険が伴う非常に危険な症状です。速やかに動物病院を受診してください。
6:アボカド
アボカドの犬への影響は議論が分かれています。種子の丸呑みによる腸閉塞のリスクにも注意が必要です。
アボカドの毒性は議論が分かれている
アボカドに含まれる物質「ペルシン」が毒性成分と言われています。この影響を受けるのは大型の鳥、牛、羊、山羊などです。犬は影響を受けにくいと考えられています。
アボカドは脂肪分が多いため、大量摂取による「急性膵炎」のリスクもあります。
種子の丸呑みも報告されており、異物による食道閉鎖のリスクがあります。
誤って食べてしまった場合、嘔吐・下痢などの症状が出ないか注意してください。
7:マカデミアナッツ
ナッツには大量の油脂が含まれています。そのため、急性膵炎を引き起こす場合があります。
マカデミアナッツが中毒を起こす仕組みは、まだわかっていません。ごく少量でも症状が出ます。
マカデミアナッツには大量の油脂が含まれており、急性膵炎発症のリスクがあります。症状は3〜6時間以内に起こり、24〜36時間続きます。
中毒症状
- 脱力
- 歩行困難
- 体温上昇
- 嘔吐
- 下痢
8:キシリトール
人には安全なキシリトールも、犬には低血糖、肝不全を起こす場合があります。ガムの誤食には注意が必要です。
毒性
キシリトールはガム、デンタルケア製品、歯磨き粉などに多く含まれます。人には安全な成分ですが、犬が摂取すると低血糖、肝不全を起こす場合があります。
中毒症状
- 嘔吐
- 体に力が入らない
- 歩けなくなる
キシリトール中毒は摂取後、20分〜3時間以内に起こります。比較的早く症状が現れやすいのが特徴です。
9:カフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶)
カフェイン中毒はコーヒー、紅茶などの飲み物の他、頭痛薬の誤食でも起こります。特に薬の誤食は命の危険に直結します。
中毒症状
- 落ち着きがなくなる
- 嘔吐
- 心拍数の増加
- 下痢
- 心不全
10:アルコール類
ワインなどのアルコール飲料だけでなく、手指の消毒液でも中毒が起こります。
犬がアルコールを摂取すると酔っ払った状態になります。
中毒症状
- 低体温
- 胃腸障害
- 眠り込む
症状は30〜90分以内に急速に起こります。24〜36時間続く場合があります。
参考リンク
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