脂質

犬の手作りごはん栄養学「脂肪酸」【初心者向け】

脂肪酸」は「脂質」の主成分。油脂の中にどのような「脂肪酸」が多いかにより、体に働きかける性質が変わります。

この記事では「脂肪酸」について解説します。

脂肪酸」を理解することで犬の手作りごはんに「どんな油を選べばいいか?」がわかります。以下のポイントに沿って解説します。

  • 飽和脂肪酸
  • 不飽和脂肪酸
  • 必須脂肪酸

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があります。

飽和脂肪酸

パーム油、やし油、ラード、牛脂などに多く含まれます。常温で固形の油脂に多い脂肪酸です。

種類

  • パルチミン酸
  • ステアリン酸
  • ラウリン酸
  • ミリスチン酸
  • カプリン酸

主な働き

  • コレステロールを増やす
  • 中性脂肪を増やす
  • 血液の粘度をあげる

飽和脂肪酸は上記の働きから「体に悪い」と誤解されがちです。しかし「飽和脂肪酸」の摂取量が少なすぎても、脳出血リスクを高めるなどデメリットがあります。

「飽和脂肪酸」も適度に摂取することが健康維持には必要です。

多価不飽和脂肪酸

オリーブオイル、ごま油などの植物油、魚油に多く含まれる脂肪酸です。

酸化しやすく、劣化しやすいという特徴があります。構造により「n-3系」「n-6系」に分類されます。

n-6系

n-6系にはγ-リノレン酸アラキドン酸リノール酸があります。

犬が手作りごはんで摂取する量が多いのは「リノール酸」です。

リノール酸一般植物油(大豆油、コーン油、ごま油など)に多く含まれる。動脈硬化や高血圧の予防に。摂取しすぎると動脈硬化の原因になる。

n-3系

n-3系にはα-リノレン酸DHAEPAがあります。

【EPA】魚類の油脂(本鮪の脂身、ブリ、ハマチ、さんまなど)に多く含まれる。動脈硬化、高血圧、痴呆の予防、LDL(悪玉)コレステロールの低下

【DHA】魚類の油脂(マイワシ、本鮪の脂身、鯖、ブリ、さんまなど)に多い。抗血栓作用、脳卒中、高血圧、動脈硬化の予防LDL(悪玉)コレステロールの低下アレルギー症状の改善

EPA、DHAはいずれも魚に多く含まれます。

犬に魚を与えるメリットについては以下の記事でも解説しています、ご参照ください。

必須脂肪酸について

体にとって必要な脂肪酸だが体内で合成できないものを「必須脂肪酸」と呼びます。

必須脂肪酸は食事から摂取する必要があります。

犬は「リノール酸」と「α-リノレン酸」を材料に、体内でγ-リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAを合成できます。

リノール酸」「α-リノレン酸」は食事から適度に摂取する必要があります。

リノール酸植物油に、α-リノレン酸月見草オイル魚類に多く含まれます。

脂肪酸まとめ

  • 脂肪酸にはそれぞれ特徴がある
  • 飽和脂肪酸は動物性油脂に多い
  • 不飽和脂肪酸は植物性油脂、魚油に多い
  • 体で合成できない必須脂肪酸を食事から摂取する必要がある

犬の栄養学を詳しく学びたい方は入門者向けのこちらの無料電子書籍も併せてどうぞ。

犬の手作りごはん栄養学「脂質」【初心者向け】

脂質は効率の良いエネルギー源。細胞膜やホルモンの材料にもなる、体に欠かせない物質です。

この記事を読むことで、脂質について以下のことを理解できるようになります。

  • エネルギー源としての脂質
  • 体の材料としての脂質
  • 脂質を多く含む食品の紹介

1:エネルギー源としての脂質

脂質は1gあたり9kcalと糖質、タンパク質と比べて高カロリーです。

脂質は体動かすエネルギー源として重要です。

例えば犬の「散歩」。

軽度の運動をまとまった時間続ける=有酸素運動です。犬の散歩は有酸素運動。この際、エネルギー源として使われるのが体に蓄えられている「体脂肪」です。

脂質は「高カロリーだから」と避けられる傾向にありますが、体にとっては必要なものです。

犬が元気に散歩を楽しむために、適度な脂質の摂取は必要です。

2:体の材料としての脂質

脂質が体の材料になる、というのは普段あまり意識されません。ここでは脂質が体の構成素として重要な役割を担っていることを解説します。

脂質は皮脂膜の材料になり、皮膚を守る

犬も私たちも皮膚の表面を「皮脂膜」で覆っています。

皮脂膜」は私たちの皮膚の表面から「水分」が蒸発することを防いでいます。この働きにより、私たちの皮膚内では適度な水分が保たれます

もしこの「皮脂膜」が無くなるとどうなるでしょうか?

皮膚の表面からどんどん水分が蒸発し、角質層の乾燥が進みます。

乾燥が進むと皮膚は外部からの刺激を受けやすくなります。外部からの異物も侵入しやすくなります

結果として、肌荒れ、かゆみ、湿疹などの原因となります。

皮脂膜は皮膚から分泌される「皮脂」から作られる「肌のバリア」です。

この「肌のバリア」の原料として、食事から摂取する適度な脂質が必要なのです。

脂質は「皮脂膜」の材料となる。

脂質は細胞を作る「細胞膜」の材料となる

犬も私たちも「細胞」がたくさん集まってできた「多細胞生物」です。

人の体で37兆個の細胞があるとされています。この細胞1つ1つの構成要素として使われているのが「リン脂質」という物質です。

リン脂質」は細胞を包む「細胞膜」を作るのに欠かせない物質です。

私たちの体の細胞37兆個が必要とする「リン脂質」。このリン脂質の材料として「脂質」は必要不可欠です。

細胞は犬・人ともに生命の基本要素です。その基本要素を作るのに不可欠な材料として「脂質」は存在しています。

このことからも脂質は「食事から適量」を取る必要があることがわかります。

脂質は「細胞膜」の材料になる。適度な摂取が必要。

脂質はホルモンの材料となる

私たち体内では様々な「ホルモン」が働いて体の機能を調整しています。

その中でも「ステロイドホルモン」と呼ばれるグループは、脂質を材料とする「ステロール類」から作られます。

ステロイドホルモンの代表は「副腎皮質ホルモン」。

このホルモンは「炎症の抑制」「糖質の代謝」「免疫反応」など様々な役割を担っています。

脂質は大切な「ホルモンの材料」になる。

3:脂質を多く含む食品

脂質は以下の食品に多く含まれます。

  • 油脂類(オリーブオイル、バターなど)
  • 肉類
  • 魚類

犬の手作りごはんにおすすめで、脂質を適度に含む食品については下記を参照してください。

脂質は犬の体に必要なものですが、一度に大量に脂質を摂取することは「急性膵炎」の原因になります。

これについては下記の記事も併せて参照してください。

脂質の性質を決めるのは「脂肪酸」です。脂肪酸の特徴を知ることで、犬の健康に最適な油脂の選び方がわかります。

脂肪酸については以下の記事で詳しく解説しています。