犬の管理栄養士アドバンスによる「犬の手作りごはん」ガイド。今回は、老犬にもおすすめの「薬膳を取り入れた手作りごはん」基本の解説です。
「老犬の手作りごはん | 手羽元でかんたん参鶏湯(サムゲタン)」記事はこちら。
このメニューは「薬膳」の考え方を参考に作ったものです。「薬膳」は中国古典医学(以下、中医学)で
- 健康維持
- 病気の治療、予防
に用いられる、特別な食事です(辰巳洋, 中医薬膳学,2015)。
「じゃあ、犬に薬膳って具体的に何をどうしたらいいの?」
今回はそんな「基本」をご紹介しようと思います。
「薬膳」の基本 | 食物の分類
中医学では、食べ物を用途別に以下の3つに分けています。
- 食べて美味しい「食材」
- 味は良くないが、薬効がある「中薬」
- 「中薬」の中で、食材としても使えるものは「食薬」
これらをさらに、個別に見ていきましょう。
1 | 食べて美味しい「食材」
これはいわゆる私たちがイメージする「おいしい食べ物」です。
- 穀類
- 肉類
- 魚
- 野菜
など。
2 | 味は良くないが、薬効がある「中薬」
「中薬」に分類されるものは、「薬味」として食卓にのぼるものがあります。
- 生姜
- しそ
など。
それ単体で食べるとなると、手放しで「おいしい」とはいいがたい。でも、他の食材と合わせると香りが引き立ちおいしくなる。そんな食物のグループです。
3 | 「中薬」の中で、食材としても使えるものは「食薬」
- なつめ
- クコの実
など、「中薬」として薬効があるとされる食物の中で料理にも使われるもの。これが「食薬」です。
「薬膳」の中身
薬膳とは「食材」「中薬」「食薬」を組み合わせて、ひとりひとりの体調やコンディションにあわせてつくるごはん、とここでは理解してください。
ちなみに「薬膳だから、必ず中薬や食薬を使わなきゃ!」というルールはありません。
健康維持のため、ふだんの食事「食養」
「薬膳」の中に「食養」という考え方があります。これは「食事を用いて体を補う」という基本中の基本をさします。
健康を維持するために、適切な食事をとる。「食養」の中には
- 美肌
- ダイエット
- 老化防止
など、病気がない状態の人が「こういう健康のステージを目指したい」と考えるものも含まれます。
犬の場合であれば、被毛にうるおいを、や、適正体重の維持、などですね。
調子が悪いときの、いたわりごはん「食療」
「食養」の次のステージとして「食療」があります。これは病気がある場合が対象です。
例えば、犬がお腹を下した時、消化の良い白粥や鶏から出汁をとったスープをあたえる、などは「食養」にあたります。
調子が悪いときに、家庭でたべる体にやさしいごはん、ですね。
そのときの状態に合わせて使い分けるのが「薬膳」
こうしてみると、私たちは普段の生活の中で、自然と食事を使いわけていることに気がつくと思います。
ふだんのごはん「食養」、調子が悪いときの「食療」。これらを含めて「薬膳」と呼ばれます。
薬膳で用いられる「食材」と「中薬」
では、実際にどういう食材を使ったいいのか?
下記に犬の手作りごはんでも利用される、薬膳食材の一部をご紹介します。
滋養強壮の食材
消化がよく、エネルギー源となるものが多いです。
- 米
- ヤマイモ
- 黒ごま
- 黒豆
- 大豆
- 卵
- 牛乳
- 豚肉
- クコの実
水分補給の食材
これらの食材は水分を多く含み、体に潤いをあたえると考えられています。また、カリウムを多く含み、利尿作用のある野菜・果物類を多く含みます。
- トマト
- きゅうり
- すいか
- りんご
- 梨
体を温める食材
- もち米
- 鶏肉
- あゆ
- スズキ
- 羊肉
- 鹿肉
- なつめ
こうした、普段からよく食べられている食材を上手に組み合わせて、健康維持や病気の予防にいかすごはん。これが「薬膳」の基本となります。
薬膳手帖を参考にしてみよう
こうした食材のもつ「薬効」は本にまとまって一般書として販売もされています。初心者向けに使いやすいのは、この書籍。
興味のある方は、書店などで、ぜひ手にとってみてください。