Office Guriの諸橋直子です。日本アニマルウェルネス協会認定「ホリスティックケア・カウンセラー」、愛玩動物飼養管理士2級の有資格者です。
犬の手作りご飯歴15年になります。
さて犬の手作りご飯初心者の方の中には
「素人の手作りごはんで、犬に必要なタンパク質をちゃんと賄えているんだろうか?」
と不安を感じる方が、結構な数いらっしゃいます。
そこで今回の記事では「手作りごはんでタンパク質が足りているかどうか?をどこで判断すればいい?」をテーマに解説していきます。
「食事からタンパク質は、どのくらいの量を与えれば問題ないのか」についても基本の考え方を解説していくので、参考にしてください。
犬にタンパク質が不足するとどうなる?
根本的な問題として、犬にタンパク質が不足するとどうなるのでしょうか?
これを理解するためには、まず「タンパク質が犬の体でどのように使われているのか?」を理解する必要があります。
タンパク質については下記の別記事でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
タンパク質の働きをざっくり言うと
タンパク質は栄養学的にみると以下の2つの役割を担います。
1:エネルギー源になる
タンパク質は1gあたり4kcalのエネルギー源になります。
2.体の構成素になる
たんぱく質の働きとして重要なのは、体を作るパーツの構成素になる点です。以下に、タンパク質によって作られるものを挙げます。
- 毛
- 皮膚
- 爪
- 筋肉
イメージしやすい「体のパーツ」の代表はこの4つです。実はこれ以外にもタンパク質によって作られる、体にとって重要なものがあります。
それが以下の4つです。
- 免疫抗体
- 酵素
- 神経伝達物質
- ホルモン
免疫抗体は、外部から侵入した病原体への攻撃に使われます。酵素は体内で行われるあらゆる化学反応をスムーズに行うのに欠かせません。
神経伝達物質も多くの種類がありますが、よく知られているのは例えばセロトニン。脳の神経伝達物質です。
ドーパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン(恐怖、驚き)をコントロールし、精神を安定させる働きをしています。
セロトニンの原料となる「トリプトファン」は、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種です。
結局、タンパク質不足の何が怖いの?
タンパク質の働きを大まかに理解したところで、いよいよ本題。
多くの手作りごはん初心者の方がなぜ「犬の食事のタンパク質が不足したらどうしよう?」と心配する理由はここにあります。
すなわち:
タンパク質が十分足りていれば問題なく健康に維持される
皮膚や爪
内臓や筋肉
必要量が十分作り出されるホルモンや酵素
これらが維持できなかったり不足したらどうしよう?と言うあたりが、悩みの核心となりますが、いかがでしょうか。
概ねそう言うことが自分自身の不安の原因だったかも!と気がつかれた方も多いと思います。
では次にその不安が「現実」になった場合、何が起こるか?を見ていきます。
タンパク質が不足すると、犬に何が起きるか?
タンパク質が健康な皮膚や被毛を維持しているのであれば、不足した場合はその逆を考えるとわかりやすいです。
他のタンパク質によって維持されている体のパーツ、機能についても同様です。
つまり:
- 体力低下
- 病気にかかりやすくなる
- 毛のパサつき
- 爪のひび割れ
といった目に見えてわかるような異常が見られる場合、食事からのタンパク質が不足している可能性があります。
しかしながら、ここで冷静に考えてみましょう。
実際に犬の手作りごはんを実践していて、あなたの愛犬はこのような状態に、陥っていますか?
よほど偏った食事を長期間続けない限り、このような極端な「たんぱく質不足」は起こりません。
結論:見た目にも犬が健康そうであれば、まずは問題なし
毛ヅヤもよく、皮膚の状態もよければ手作りごはんから、犬に必要なタンパク質は十分摂取できています。
そうは言ってもやっぱり心配!具体的な「量」が知りたい
見た目的に健康であれば、タンパク質の摂取量は十分です。
基本的に心配要りませんが、やはり
「そうは言っても1日どのくらいの量のタンパク質を与えれば良いか知りたい」
と言う方も多くいます。
そこで市販のペットフードに含まれている栄養量を参考に考えてみることにしましょう。
以下、犬の総合栄養食の基準を満たすために採用されるAAFCO基準より引用します。
AAFCO 2016:タンパク質
4000kcal ME/kg 成犬・維持期 最小値18.0%
AAFCO:「米国飼料検査官協会」ペットフードの栄養基準を制定している組織。
日本で「総合栄養食」と言う場合、そのフードと水のみで犬が生きて行ける栄養素を満たす、と言う意味。AAFCOの基準を参考に日本でも制定されている。
https://www.aafco.org/
数値の意味を解説していきます。
1kgあたり4,000kcalのペットフードについて。
犬用 | ライフステージは成犬・維持期。
そのうち重量の18%以上のタンパク質が含まれている必要がある。
4000kcal ME/kg 成犬・維持期 最小値18.0% の一行にこれだけの情報が詰まっています。ここから計算をはじめていきましょう。
愛犬の1日のエネルギー要求量(DER)を計算してみよう
1日にどのくらいのタンパク質を犬に与えれば良いか?を知りたい場合、まず「犬が1日にどれだけのエネルギーを必要とするか?=DER」を計算しなくてはなりません。
初心者の方には少々ややこしいですが、一度この計算をやってみると安心できるので是非やってみることをお勧めします。
- DER=RER(安静時エネルギー要求量)(kcal)×係数
- RER=体重(kg)×30+70
安静時エネルギー要求量は、静かに寝て呼吸しているだけで必要となる最低限のエネルギーのこと。
これに活動量やライフステージ、避妊・去勢手術の有無による代謝量を加味します。その際に用いるのが「係数」です。
ここでは「避妊、去勢済みの成犬:1.4」を係数として用います。
例:避妊済みの体重10kg、成犬のDER
RER=10(kg)×30+70=370
DER=370×1.4=518kcal
この犬の1日のエネルギー要求量は518kcalです。
1kgあたり4000kcalのフードを、この犬は1日に130g食べる計算になります。130g中含まれるたんぱく質は最小値18%。
計算すると
130g×18%=23.4g
1日この犬は23.4gのタンパク質を必要とする計算となります。
これを実際の食物で計算すると:
鶏卵Lサイズ1個(60g):タンパク質9.9g
鶏ささみ1本(45g):タンパク質10.3g
納豆1パック(50g):タンパク質8.3g
鶏ささみだと2本半程度で、1日に必要なタンパク質を賄える計算になります。
タンパク質は肉・魚・大豆製品に多い、しかし…
タンパク質を多く含む食品といえば先に挙げた「ささみ」や「卵」「大豆製品」などをイメージする方が多いと思います。
しかしながらたんぱく質はいわゆる「タンパク質っぽい食材」以外にも含まれています。
例えば「米」。米といえば「糖質の代表」的な食材ですが100gあたり6gのたんぱく質が含まれます(ただし、タンパク質を構成するアミノ酸バランスを示す数値=アミノ酸スコアは低めです)。
その他にもタンパク質を含む食材はたくさんあります。
つまり「色々な食材を食べることで、結果として必要なタンパク質は十分摂取できる」と言うのが実際のところです。
細かい栄養計算をしなくても「肉(または魚):野菜:主食=1:1:1」の比率を守っていれば、必要な栄養素は過不足なく摂取できるのはこのためです。
難しいことは一度、徹底的に考えてみよう
今回はあえて、少々面倒な計算方法もご紹介しました。
難しく感じることもあるかもしれませんが、疑問に思ってた点(今回は、手作りごはんのタンパク質足りてる?)は一度、徹底的に考え、数値で計算してみることが大切です。
そうして出てきた数値を基に「実際の食材で摂るとしたらどのくらい?」を考えてみる。
一度考えて納得できたら、基本の「肉(または魚):野菜:主食=1:1:1」に戻る。
疑問に対して一度じっくり向き合うことは大切です。一方で食事は毎日のことです。複雑に考えすぎるのもよくありません。
大事なポイントを理解したら、それを毎日持続可能な行動に落とし込んで実行する。手作りご飯ではこれが大切な姿勢です。
まとめ
手作りご飯でタンパク質不足?
→犬の健康状態に問題がなければ足りている
1日に必要な摂取量は?
→体重から計算して、実際の食材ベースに落とし込んで考えてみる
結局、どうすればいい?
→食材の極端な偏りは避け、基本の「肉(または魚):野菜:主食=1:1:1」を守る
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