いちごを犬におやつ代わりに与えているという飼い主さんも多いはず。

いちごはビタミンCが豊富で、高い抗酸化作用を示すポリフェノールも多く含みます。

一方で「いちごにはキシリトールが含まれていると聞いた。キシリトールは犬に良くないんでしょう?」と心配する方もいます。

この記事では、いちごを犬に与える栄養学的メリットと「いちごに含まれるキシリトールって実際どうなの?害があるレベルなの?」を解説していきます。

犬にいちごを与える栄養学的メリット

いちごはビタミンCが豊富な果物です。

ポリフェノールの一種であるアントシアニンも多く含みます。

いちごに多いビタミンCの働き

ビタミンCは体内でコラーゲンを生成するのに欠かせない成分です。

また強い抗酸化作用を持ち、特にLDLコレステロールの酸化を防ぎ血管の健康を守る働きがあるとされています。

ホルモンの合成促進鉄の吸収を助けるなど様々な働きを持ちます。

抗酸化作用を持つアントシアニンも豊富

アントシアニンは赤や紫、青色の色素成分です。いちごの鮮やかな赤色もアントシアニンによるものです。

アントシアニンは抗酸化作用で注目される成分です。

いちごを食べることで犬も適度なアントシアニンを摂取することができます。

いちごに含まれるキシリトールは犬に有害?

2006年にアメリカで、キシリトールの入ったお菓子やガムの誤食で犬の死亡事故が報告されたことから「犬のキシリトール中毒」に注目が集まりました。

キシリトールを多く含む食品の誤食は、犬に低血糖、肝障害を起こします。

ここで問題になるのは摂取量ですが、この「量の概念」を無視したまま闇雲に危険だ!と騒ぐことは無益です。

ここではキシリトールと犬の中毒について、正しく理解できるよう解説していきます。

そもそもキシリトールって何?

キシリトールは私たち人間向けの食品にはごく普通に使われる「甘味料」です。「糖アルコール」と呼ばれるグループに属する物質です。砂糖の代わりに使用されます。

キシリトールは人間にとっては有益な甘味料

キシリトールの特徴は、砂糖と同程度の甘みを持ちながら人の血糖値を上昇させない点です。このことは、甘みを求める糖尿病の患者さんにとってメリットがあります。

また甘味料でありながら虫歯になりにくい保湿剤として、抗菌作用を持地ます。

そのため、ガム、キャンディ、ダイエット食品、マウスウォッシュ、歯磨き粉などに幅広く使用されています。

キシリトールは甘味料として過去40〜50年に渡り、人間に対しては非常に安全であることが確認されています。

このように人に対して安全性が確立されたキシリトールが様々な製品に使用されるようになりました。

その結果、犬が誤食事故を通してキシリトールを摂取してしまう機会が増えてしまったことに問題があります。

犬と人ではキシリトールの対する「反応」が異なる

キシリトールを摂取しても人の場合、急激な血糖値の上昇は起こりません。そのため血糖値を下げるためのホルモン「インスリン」が放出されることはありません。

ところが犬の場合、キシリトールによく反応し「インスリン」が大量に放出されます。

その結果、犬はキシリトールを摂取すると一気に血糖値が下がり「低血糖」を起こしてしまいます。

血糖値が急激に下がると、レベルによって意識の低下、脱力、痙攣などが起こります。深刻な場合は肝障害が起こります。

犬のキシリトール中毒は「低血糖」によって起こる。

大切なのは「どのくらいの量」で中毒になるか?ということ

キシリトールは天然に存在する甘みです。

いちご、カリフラワー、レタス、ほうれん草などにも存在します。

いちごには100gあたり、362mgのキシリトールが含まれます。

犬が低血糖を起こすキシリトールの量は、体重1kgあたり100mgと考えられています。

肝臓壊死が起こるのは体重計1kgあたり500mgのキシリトールを摂取した場合です。

では実際に体重10kgの犬が低血糖を起こす量のキシリトールはどの程度の量ですか?考えてみましょう。

低血糖を起こす量:100mg/kg → 体重10kgの犬の場合、1000mgのキシリトール摂取で低血糖を起こすと考えられる

では、この量をいちごで摂取しようと思うと?

276gのいちごを体重10kgの犬が一気に摂取することになります。

いちご中サイズ7粒で約100gです。

中毒を起こす量のいちごとなると一度に20粒程度与えることになります。

体重10kgといえば柴犬のオスの平均体重程度です。

常識の範囲内で考えて、このような体のサイズの犬に、一度にいちごを20粒与えるというのは考えにくいです

おやつとして与える場合、体重10kg程度の犬でもせいぜい2〜3粒程度ではないでしょうか。この程度の量であれば、犬の健康に対する影響は全くありません。

キシリトールの誤食事故で注意したいのはガム、キャンディ、歯磨き粉など人間向けの製品。サプリメントにも注意!

キシリトールが人間にとっては有益なことはすでに開設しました。

そのため、人向けの製品の誤食こそ注意を払うべきです。

キシリトールを高濃度に含む製品の代表は「ガム」。

人向けの製品には、甘味料として自然の食品に含まれる量と比べて大量のキシリトールが含まれています。

キシリトールについて心配するのであれば、こうしたガム、サプリメントなど飼い主自身が利用しているものに目を向けるべきです。

製品のラベルを確認し、キシリトールが使用されていないかどうかをチェックしましょう。

もし使用されている場合はいぬが誤って食べないよう、犬の口の届かないところへ管理すべきです。

結論:いちごのキシリトールは気にせず良い程度の量

いちごはキシリトールの含有量が多い果物です。

そのため「犬に与えてはいけない」といわれるケースがありますが、中毒を起こすのは主に、人間向けのキシリトールを使用したガムやキャンディの誤食によルものです。

大切なのは「どの程度のキシリトールを摂取すると危険なのか?」という「」の概念を正しく理解すること。

「量」の概念を正しく理解できれば、微量のキシリトールが含まれる果物、野菜は全部ダメ!危険!とやみくもに怖がり、食の選択肢を狭める、ということにはなりません。

犬の食事を管理する上で、情報を正しく集め、正確に理解することは大切なこと。

ぜひ、いちごとキシリトールの関係をきっかけにこのような考え方を身につけていただければ幸いです。