犬の手作りごはんに味付けは不要です。これはシンプルな事実です。一方でこの事実が一人歩きし「犬に塩分は危険!」という誤解も生まれています。

過度の塩分摂取は犬だけでなく、人間も危険です。ただしそれはあくまで「」の問題。塩分自体が犬の体に害を与える「毒物」というわけではありません。

この記事では、こうした「塩分」への誤解を解き、犬と塩分の正しい関係について解説していきます。

この記事を読むことで、あなたは「犬と塩分」の関係について正しく理解できるようになります。必要以上に塩分を怖がることがなくなり、犬の手作り食への不安を一つ解消できます。

そもそも塩分は、犬にとって必要です。

私たちの体は人も犬も、塩分を必要とします。

「塩分」を知ろう

塩分というのは一般的に「食塩」と同じ意味合いで使用されます。ここでは成分「塩化ナトリウム」について詳しく解説します。「塩素」と「ナトリウム」で構成される物質です。

塩素のはたらき

塩素」は体の中で「胃液」の材料になります。胃液中に含まれる「塩酸」のなかに「塩素」は含まれており、タンパク質を消化する酵素を活性化します。

また「塩酸」は強い酸性なので、殺菌効果を発揮します。食べ物に含まれる雑菌を殺し、犬を食中毒から守っています特に犬の胃酸は酸性度が高く、少々腐った食べ物を食べても平気でいることも多いです。

ナトリウムの働き

ナトリウムは体内の水分量を調整するのに欠かせません。

カリウムとセットになり、神経伝達、筋肉収縮、心臓を正常に動かすなど大切な働きを担っています。

最初の結論「犬だって塩分は必要」

塩素もナトリウムも、生きていく上で犬にとって大切なものです。食事から全く摂取できないと、生理・代謝が阻害されます。最終的には生命の危険があります。

結局のところ、大事なのは「」の問題です。与えすぎてもダメ、与えなさすぎてもダメ。

では、犬の手作りごはんを作る上で「塩分」をどう扱ったらいいか?

肉・魚にもともと含まれる塩分で犬は十分

味付けをしていない生の魚や肉にも一定量の塩分が含まれています。

例えば鮭。塩で味付けをしていない生の鮭を焼いて食べたことはありませんか?その時全く塩味はしなかったでしょうか?

塩でしっかりと味付けをしたものほどではなくても、ほんのりとかすかな塩気を感じるはずです。

実際に、味付けをしなくても鮭100gあたりには0.2gの塩分(食塩相当量で換算)が含まれています。(出典:食品成分表 女子栄養大学出版部)。

肉も同様です。鳥もも肉100gあたり0.1gの塩分が含まれています。

つまり、特に味付けをしなくても肉・魚にはもともと塩分が含まれている、ということです。。犬はこの「もともと食材に含まれている塩分」のみで十分やっていけるため、手作り食に味付けは不要なのです。

犬に塩分は不要」は不正解。

犬は低塩分でも生きていける」が正解。

犬も生命維持には塩分が必要なので、必要量は摂取しなくてはいけません。それは肉や魚に元々含まれている量で十分です、という話。

ちなみに犬の1日の塩分要求量は「体重1kgあたり242mg(NRC:National Research Council 1977)」とされています。成犬期の犬・体重10kgで2.4gほどです。これは一般的な食塩小さじ1/2杯程度に相当します。

犬に塩分が「害」になる量ってどのくらい?

一般に犬が体調を崩す塩分の摂取量は2〜3g/kg(体重1kgあたり)、4g/kgで致死量とよく言われます。体重10kgの犬が食塩を20〜30g摂取で嘔吐などの異変が現れる計算になります。

食塩20〜30gというのは相当な量です。塩大さじ1杯が約15g、大さじ2杯の食塩を一度に食べて体調不良というイメージです。

塩大さじ2杯を一度に口に入れるところをイメージしてみてください。これはかなり「しょっぱい」どころではない量ではないでしょうか?

犬が塩分を一定量、一度に摂ると確かに体調不良を起こします。しかしながら、その大量不良を起こす量が、常識的に考えて「そもそも一度に食べられる量ではない」ということがわかります。

犬に口の中が塩が白だらけになる量を与えても、そもそも飲み込まずに吐き出すことでしょう。

でも実際に、塩分の過剰摂取による、犬の体調不良や死亡事故が起こるのは何故?

塩の誤食事故には以下のパターンがあります:

  • 高濃度の塩分が溶けた水を興味本位で舐めた、飲んだ
  • 異物を飲み込んだ犬へ、飼い主が「塩水を飲ませれば吐く」という情報をもとに大量の食塩水を飲ませた
  • 塩化ナトリウムを使用した「融雪剤」の誤食
  • 海水を大量に飲み込んだ

これらの誤食事故は、飼い主が注意することで多くの場合、防げます。

まとめ

犬にとっても「塩分」は必要。生命維持に欠かせない大切な物質。

ただし、犬は人ほど塩分を必要としない。低塩分でも生きていける動物。

問題になるのは「」。過度な塩分摂取は中毒症状を起こすので誤食事故に注意。

手づくりごはんは肉・魚にもともと含まれる塩分をそのまま生かし、味付けなしで犬に与えるもの。犬が生きていくのに必要な塩分はそれで十分摂取可能