犬の管理栄養士アドバンスによる「犬の手作りごはん」ガイド。今回も、「薬膳」の知恵を取り入れた「老犬のための手作りごはんメニュー」をご紹介します。
まずは作っている様子から、犬たちが食べるところまで、動画でお見せしています。こちらからぜひ、ご覧ください。
牛スジは、柔らかく煮込むことで、硬いスジがほどよいゼラチン質のプルプルに変わります。そのゼラチン質が溶け出したスープは、夜、室温においておくと、朝には煮こごりになり、固まっています。
このプルプルが、実に美味しそう。
スジは脂肪分は少なめですが、こっくりと濃厚なダシが出るのも特徴です。
【材料】体重25kg大型犬2匹×2回分
- 牛スジ煮(あらかじめ下処理し、やわらかくしたもの):スープ込みで500g
- レンコン:270g
- 生姜スライス:1枚
- パプリカ:1個
- ごま油、ごはん:適量
牛スジはまとめて下茹でをし、ストックしておくと便利です。 下茹での方法は、こちらの動画でご紹介しています。
【作り方】
- レンコンを厚さcmのいちょう切りにし、ごま油で炒める。
- 下茹でしておいた牛スジとスープ、生姜スライスを加えて、圧力鍋で5分加圧する。加圧後は火を止め、自然放置。
- 圧が下がったら、細切りにしたパプリカを加えて軽く煮込む。
- 犬が食べやすいよう、水溶き片栗粉でとろみをつける。
- ごはんにかけて、犬に与える。
栄養学的にも、優秀な「牛スジ」 | 老犬におすすめ
牛スジは老犬におすすめの食材です。以下に理由を挙げていきます。
- 脂肪分が少なく、低カロリー
- プルプルのゼラチン質はコラーゲン
- どっしりとした旨味とコクが特徴
牛スジは実は低カロリー。理由は脂質の少なさです。
100gあたりのカロリーで比較してみると、
- 牛バラ肉:371kcal
- 牛スジ(茹で):155kcal
さらに脂質の含有量で見ると
- 牛バラ肉:32.9g
- 牛スジ(茹で):4.9g
このように、牛スジは「脂質少なめ、あっさり」な食材であることが分かります。
数値参考:食品成分表
老犬の食事 | 脂質コントロールが鍵に
我が家のまもなく16歳になる老犬のケースをご紹介します。我が家の愛犬は、若い頃と比べると脂質に弱くなりました。少しでも脂の多いメニューだと、下痢をするようになったのです。
脂質が多い食事でも、特に問題なく過ごす老犬もいます。一方で、老犬になると基礎代謝が下がり、肥満気味になる犬が増えることも事実です。
そのため老齢期に入った犬は、胃腸の状態や体重などを考慮し「食事内容を見直す」必要に迫られることがあります。
脂質は体にとって大切なエネルギー源です。細胞やホルモンを作る材料にもなるので、適度な摂取は必要です。ただし、量には注意する必要があります。
肥満防止のために、多くの場合、脂質の少ない食事が選択されます。しかし脂質が少ない食事は味気ないのも事実です。
その点、牛スジは低カロリーでありながら、コクのある出汁と旨味が特徴です。筋肉や皮膚を作るタンパク質(ゼラチン質)も豊富。まさに老犬にはピッタリの食材といえるでしょう。
薬膳の視点でみた「牛スジ」
牛スジは薬膳では、以下の効果があると考えられています。
- 骨や筋肉を強くする
- 肌を健やかに保つ
- 体の生理機能を促進し、体力を増強する(補気)
犬も人間も、歳を取ると足腰が弱くなる、筋肉が減る、肌のハリが減ってくるなど、生理的な「老化」がはじまります。
また、個体差はありますが、元気がなく、疲れやすいなどの衰えが目立ってきます。
そんな「衰え」の部分を補う効果が、牛スジにはあると、薬膳では考えています。
老化は自然現象。でも、できればゆるやかに、おだやかに。
犬も人も、当然ですが歳をとります。年を取ることは自然現象です。一方で、体を適切にメンテナンスをすることで、体を良い状態で、長く保つことは可能です。
大切なのは、老化をネガティブに捉えるのではなく「老化に伴い、体には何が起こるか?」を、知識としてまず知ること。その上で、出来る対応策を考え、実行することではないでしょうか。
「薬膳」の目的は「健康と長寿」。
犬も人と一緒に歳をとります。そんな「歳を重ねる愛犬」の健康を、食事から考えサポートしていきたい、とお考えの飼い主さんには「薬膳」を取り入れてみるのがおすすめです。